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2019/09/24

傍系視点でQawwaliを「見」る (その2)

さてさて、今日もまたおかしな動画貼りつつアツく語っちゃうよ~。

…と言っても、今回は紹介するのも躊躇したほど、音質も映像も相当に酷いです。スピーカーの方はボリューム一旦下げてから、ヘッドホンの方はヘッドホンちょっとズラして聴かないと耳壊れるかも。

今回は(も?)、もはや曲への関心というよりは、状況全般について、主に楽団内、もしくは、カゥワールと聴衆…いや、この映像の場合「聴衆」なのかすらわからない方々との関係性に着目しまくっております。なので画質音質度外視で、それでも「うおお」と色々思わざるを得なかったヤツなのです。

でも、演奏進行の手法(?)中心だから、傍系ってほど傍系ではないかな?わからんw

まずはもう何度も言ってそうだけど、ホントにインタネットに感謝だわ。だって、安くはない貯金はたいて現地に行ったとしても、外国人女子、こんなトコに潜入することはままならない。
そんなところの映像までこうやって拝めてしまうんだもの。

さて。
今回も、先日来日したBadar Ali & Bahadur Ali楽団の現地映像。
場所不明、イベント主旨も不明ながら、どう見てもどこかのダルガーか何かでの当日ライブ配信されていたもののアーカイブ。

配信元のFBページも、一体なんのページなのか今ひとつわからず、同名でググって唯一ひっかかったYouTube(動画はほとんどなし)のbioにある "Silsila Qadri Chisti Qalandri" という一文のみ。
よくわからんのですが、チシュティ関連の何か、なんでしょうね。

実は今回の紹介動画と同日の別ライブアーカイブ(こっちも音酷いんだけど、曲としてはこれ、実は相当に好き)もあるんだけど、いずれも、エラい方々が必ず4~5人で、円陣でも組んでるかのように手に手をとりながら楽師に向かってきては、ちょっと変わった形でヴェールを延々撒いていく。

別のダルガーでも同様だったけど、エラい方が立ち上がると、立つことが可能な楽師も観衆も立ち上がる。どうやらどこでも概ねそういう作法らしい。

このイベントはエラい方グループも複数組いるようで、次から次からエラい方グループが、歩きづらそうな円陣状態でやってくる。(そのあたりは、上の別動画だとひっきりなしに様子を見ることが出来る)しかも、楽団前での滞留時間が長いので、実質全員ずーっと立ちっぱなし、みたいな状況。

ヴェール撒きも、大抵のイベントでは個々にパァーっと豪快に撒き散らすのが常だけど、ここではどうもエラい人経由でヴェールを渡す仕組みにでもなってるのか、前に出てきているエラい人グループの数名に、周りから少しずつ紙幣が集まってはパラッパラッと投げたり、捧げ渡したり、手渡したり…というのが延々と続く。

…いや、この量がパラッパラッに思えるようになったのは、豪快すぎるヴェールの動画を見すぎたせいか?w

前置きが長くなっちゃいましたね~。
じゃあ、音の酷さにびっくりせぬよう、気をつけてご覧くださいw
ちなみに映像も、夜のフラフラ手持ちスマホです。酔わないように。

曲は(Qawwali好きには)おなじみ Ali Maura Ali 。

上述のとおりで、こちらの動画は既にエラい人グループが近寄ってきてる所から始まってるので、デーレーダール(リーダー)は最初っから立って歌ってます。

カメラが楽団近くに回り込む1:00過ぎあたりからの絵は、もう実質、その場のみなさんに向けての演奏、というよりも、目の前にいるエラい人との対話か、って状態。

エラい人もヴェールを渡したり捧げたり両手を挙げたりと、存分なリアクションで、もんのすごい濃密インタラクション。

のっけからずっと色々濃すぎて気圧されちゃうんだけど、このあたりからようやく、周囲にも目が行くようになり、他の楽団メンバーも見えてくる。

デーレーダールが立ちっぱなしってのもあって、恐らく曲の進行やペース確認の目視のため、ハルモニウムのチョーティーデーレーダール(サブリーダー)はデーレーダールの動向をしっかり見ながら演奏してるのが見て取れますね。

そして歌は "Ali Maura Ali" の繰り返し部分へ。

この濃密インタラクションで、相手のリアクションを見てなのか、恐らくデーレーダールの即興判断で繰り返しを引き伸ばすことにしたのか、1:30頃にフレーズの転調をさせようとした楽団をサッと制してAli Maura Aliを繰り返す。

わぁわぁ、やっぱり即興判断で進行させてくのか~!と、冒頭数分でも濃密なこの動画、更に前のめりに見入ってしまう。

そして、2:50過ぎにカメラが逆サイドに回り込むと、既にトランス一歩手前のおじさんが目に入る。相当キてそうだけど、他の人に抑えられつつその一歩手前の状態で、時折ヴェールもきちんと撒いたりはしてる。

そのおじさんにあっけに取られているうちに3:50くらい、ヴェールを受け取ったデーレーダールが歌いながらヴェールを足元に無造作に落としていくのに気付きはじめる。この受取済みのヴェール処理も動画を通して、何度も見ることが出来て、途中、いつ受け取って、いつ手放すか、どう落としてくか、がいちいち気になるように。

前の記事でも書いたような気もするが、未だ有象無象ある、自分の中でのQawwaliについての大量な疑問・関心のうちのひとつは、楽団の楽曲進行はどう先導されてどう合わせていくようになっているのか、なんだけど、少なくともこのイベントみたいな即興判断も多そうなシチュエーションだと、先導については圧倒的にデーレーダールの采配なのかな。

立ちっぱなしで様子が見づらいデーレーダールによる即興判断アレンジもある中、それにうまいことついてきてるハルモニウムやタブラ、絶妙なタイミングで差し込む合いの手コーラスをはじめ、楽団も凄いよなぁ。

ちなみに、紹介動画ではない別のパフォーマンスで一度、合いの手コーラスからデーレーダールが自分の歌に戻そうと思って声を出しかけたけど、楽団の演奏がそのまま合いの手サイドの歌に流れてしまい「チッ」みたいな顔して流れが戻るのを待ってるシーンも見たことはあるので、連携の失敗も時にはあるのかも。

いずれにしたって、演奏始まっちゃったらもう、走り続けたまんま全てを処理していくしかない。しかもあくまで楽団なので個人プレーな訳じゃない。個々人の技能や判断力を持っての団体行動。はかりしれないわー!

…と感心しながら見ていると、4:00過ぎにはようやく、実際ジェスチャーでやり取りにも至れた様子。にしたって、どんな時でも演奏は進んでるので、ホントに瞬時の確認、という感じ。長いこと共にやってるチームならでは、なのかなぁ。

そんなこんなしてるうちに Haq! Haq! …と、曲も最も盛り上がる所へさしかかり、カメラも再び逆サイドアングルへ移動。気づくと、当初はデーレーダールのみが立っていた楽団、他のメンバーも数人立ち上がってますね。

…と、6:35あたりから、楽師にダイレクトに、面前のエラい人から曲についての要望が入る。歌詞について、なのか、曲の流れについて、なのかは定かではないものの、エラい人が軽く手で制止してしまったのもあって、珍しく一瞬演奏全般が止まりかかるものの、早々に立て直してつなげて行く。

演奏メンバーにいながらにして換金や回収係もやる役割の名称、何ていうんだったか、以前チラリと村山先生が言ってた気がするけど忘れてしまった。取り敢えず「庶務」とでも言っておこうかw

そんな、庶務役の背後のメンバーからもデーレーダールに素早く何か耳打ちが来て、歌いながら即座に相槌だけ打ち、庶務役メンバーは一旦しゃがみ込む。どうやらヴェールの換金業務も始まった様子。なかなかの機転。

そして新たに現れるエラい人グループ。各種ヴェールの受け渡しバリエーションや受け取ったヴェールの処理も堪能。いやしかし、いつになく演奏の迫力もすごい気がするんだけどどうなんだろう。

その後も庶務役メンバーが背後からちょこちょこ耳打ちを試みてるようだけど、歌も演奏も佳境に入り、もはや聞こえてなさそう。9:10頃にまたエラい人から軽く要望が入った模様。今回は演奏が止まることもなく対応出来てる様子。

以降、わりと楽団の方ともアイコンタクトしながら歌ってる感じもある。要望による即興進路変更についてなのか、収束への移行合図なのか、そのあたりは不明。

9:40頃には、滅多に聞かない1オクターブ上への絶叫メロディまで飛び出す。この1オクターブ上に音程がいく歌い方、ヌスラットはステージライブでもちょいちょいやってたけど、この楽団で見るのは珍しい気がする。やってる楽師たちも何かスイッチ入ってたのか、聴衆への更なる高揚コントロールなのか。

で、ぼちぼち終盤、エラい人グループたちの襲撃(笑)も終わり、楽団もようやく皆座って歌を続ける。なんだかもう、agaりきった演奏がすぐにはストップ出来ず、整理体操が必要で暫く歌い続けてゆっくり収束させてるのかな、って感じ。ゴールを過ぎたけどターフをもう半周くらいする競走馬みたい。

いやー、これ、音がもうちょっとでいいからマトモだったらよかったのにねー。これだけクオリティが酷くても、最近はもうドハマリしてよく眺めてます。

そう、こういうのが見たいんだよね。
おいらが見たいのはステージ上の楽団側の「演奏」だけじゃなくて、こういうインタラクション含めて、なんだよ。場ぜんぶ。ローカルで本来的なカゥワーリ。絶対一生見れないと思うけど。

先日Qawwali好きな友人たちとの話の中で、彼ら讃歌や祈りに纏わる歌を演っているけれど、彼ら自身の役割・立ち位置っていうのは、「祈り」ではなく「祈らせ」であって、それを生業としている自覚は持ってるんじゃないか、みたいなコトを話してたんだけど、この動画とか見てると、やっぱりそれで当たらずとも遠からずなんじゃないかなぁ、と。

多分、彼ら自身がQalandar(陶酔?)状態、にはなれないんだと思う。彼らのミッションが聴衆をQalandarにさせるコトが故に、自らが溺れちゃったらむしろ、プロ失格なんじゃないかな。聴衆の求めるものを与えて、流れを読んで、煽って、それらを瞬時に判断して楽団全体の流れもコントロールして。更に可能な限り稼げるような環境作り(ヴェール換金手配とか)も、必ず並行してやる。

彼らはそれら全部ひっくるめて、やっぱり相当に上手いんじゃないかなぁ、って思う。いやいや、それらは当たり前が大前提の職能世界といえばそうなんだけど。

生で触れたことのある楽団が多いわけじゃないし、「コンサート」的なステージライブ以外でのパフォーマンス自体、生で見ることは難しいので相対値や比較すら不能ではあるんだけど、ね。
でもこの動画とか見てるだけでもそう思わない?すんごい情報量の多い濃密な10分だと思ったよ。

逆に、他の楽団の現地でのライブ動画も(特に最近は)見てみるようにしてるけど、わりと薄い演奏な楽団も多いから、判官贔屓を差し引いたとしても、彼らはすごい方なんじゃないかなぁ、って思うのでした。更に凄いのゴロゴロしてるなら観たいトコだけどね!観れないし!!